贈り主が受け取り主に「お世話になった」「お世話になっている」「これからお世話になる」という感情を抱いた場合、いずれの場合においても、お礼の言葉だけでは不十分と考え、品物まで添えるケースが圧倒的に多い。言葉だけでは不十分と考えているのは贈り主だけではなく、受け取る側も品物を期待している場合が見られる。「お世話になった」という意識で贈り物を渡す際は、贈り物に感謝の意味が込められている。「お世話になっている」という現在も続いている状態の時は、これまでの感謝と同時に、将来もこれまで同様のお世話をお願いしたいという意味が贈り物にある。「これからお世話になる」という時の贈り物には、お世話して欲しいという依頼やお願い、または買収の意図すら込められている。また、両者間にある「お世話」についての相互認識は、特定の行為に対する共通認識がある場合もあるが、漠然とした認識であることも数多くあり、贈り物自体、不明瞭な意味あいを持つ場合も見られる。 |
品物を贈ったり、受け取ったりするのは、誕生日とか、結婚記念日とか、クリスマスなどの特別な日であり、贈り物にはすべて特定の意味が、両者間にあると言っても過言ではない。そのため、贈られた品物をめぐり、贈り主と受け取り主の間で、その品物に関する会話がしばらく続くことが多い。贈り主と受け取り主の間に、何のための贈り物なのかという共通する認識のない贈り物は、ほとんどない。また、ただ単に「お世話になった」「お世話になっている」「これからお世話になる」という一つのことに特定されない、漠然とした一般的な「お世話になる」という意識は、存在しない。その意識がない以上、それらの意識に基づく贈り物というのも存在しない。 |