週末明けの登校日。アメリカに来て6日目だが、日本を出発したことがずい分前のことのような気がするのは私だけだろうか。ホストファミリーの車で生徒たちが次々とフェスラー中学校に到着してきた。生徒たちは、週末は、ホストファミリーにビーチに連れて行ってもらったり、近隣の町に出掛けたり、ホストシスターの誕生日パーティーに出席したり、ホストブラザーのサッカーの試合に行ったりして、それぞれ過ごしたようだった。中には癌撲滅運動のイベントに参加したという生徒もいた。前回のように、図書館でアメリカ人のパートナーが来るのを待ち、各クラスへと向かった。午前中は、緊急避難訓練の時間があった。アナウンスがあったら、生徒たちは机の下にもぐり、先生の指示があってから、校庭に移動するという訓練だった。つい先日、ロサンゼルスで地震があったばかりなので、タイムリーな訓練だ。ロサンゼルスでの地震は、サンタマリアでは全く影響はなく、地震があったことも全く分からないほどだった。ニュースの報道もほとんどなく、どちらかというと、ワシントン州北部で起こった地滑りのニュースと行方不明のマレーシア航空のニュースでもちきりだ。避難訓練では、校庭に集まった生徒たちが待つ間、生徒たちと一緒にいる担当、救急班の担当、各教室を確認する担当などに分かれていた。各教室を確認する先生は、中に誰も残っていないか確認して、誰もいないことが確認されるとブルーのテープをドアにはっていた。テープの役割は、確認済みを知らせることと、チェック後に誰かドアを開けたら分かるようにするためのようだ。
訓練終了後は、もとのクラスに戻り、授業を続けた。今日も先週金曜日の時間割と全く同じもので、生徒たちは、顔見知りも少しできて、今日はさらに顔つきがリラックスしているようだった。女子生徒が私の顔を見るなり、「最高です!」と言ってきた。最高なのは、もちろん私の顔ではなく、学校のことである(念のため)。そう言う生徒たちの顔はとてもキラキラして、楽しそうだったので、私まで嬉しくなった。1時間目と2時間目の間に、15分ほどの休憩時間があるのだが、その時も日本人生徒たちは、たくさんのアメリカ人生徒たちに囲まれて、写真を一緒に撮ってと頼まれたり、日本語で名前を書いてと言われたりしていた。そして、周りにいるアメリカ人生徒たちが、「彼女たち、とってもかわいいね」と、日本人生徒たちのことを話しているのが聞こえた。日本人の生徒たちが、アメリカ人をかわいいとか、かっこいいとかよく言うのを聞くが、アメリカ人にとって同じように日本人が魅力的に見えるんだなと思った。日本人生徒たちは、日本から持ってきたお菓子をあげたりして、言葉はなかなかうまく話せなくても、なんとか交流しようとしていた。そのため、アメリカ人の友達がたくさんできたようだった。
数学の授業では、先生が、アメリカ人生徒たちから日本人生徒へ質問をする時間を設けてくださった。アメリカ人生徒たちからは、日本の学校では1日何教科を勉強するのか、学校は何時から何時までか、宿題にはどれくらい時間がかかるか、日本の生徒たちはスポーツをするのか、好きな教科は何か、嫌いな教科は何かなどなど、質問が続いた。嫌いな教科は、日本語だと日本人生徒が答えると、教室からは笑いが起こった。また、アメリカの学校と日本の学校の大きな違いについて聞かれ、日本の学校の校舎は2階建てや、学校によっては3階建て、4階建てなどがある、日本には制服がある、給食がある、掃除は日本の生徒たちが行なうなど説明した。ちょうどその時、校長先生が見学にいらっしゃっていて、「生徒が掃除をするのは、いいシステムですね。メモを取っておこう。この学校にも取り入れようかな」とアメリカ人生徒たちにウィンクしながら、冗談を言っていた。その後に、日本の学校にはプールがあると言ったら、今度は、アメリカ人生徒たちが校長先生に「今のをメモして、参考にしたらどうですか?」と冗談を言っていた。アメリカの中学校にはプールはないらしい。数学の教科では、公式などを教えて覚えさせるより、生徒たちに図形や基本的なルールなどを教えて、自分で問題を解く方法を見つけさせるような教え方を取り入れようとしているらしい。公式を教えた方が早いのだが、自分の頭で考えさせることはとても大事なことだと先生がおっしゃっていた。5つの大事な考え方として、1.様々な角度から物事を考え、フィードバックしながら問題を解決する、2.論理的に自分自身の考えを証明する、3.知識を使い、新しい方法を編み出したり、問題解決を図る、4.自身の考えを他の考えや過去やこれから学習することに結びつける、5.今後起こりうることを予測する 数学とは、数字や計算の学問というより、考え方や問題解決の学習なのだと改めて思った。美術のクラスでは、先生が教壇でスプレーを使って絵を描いてみせて、生徒たちはそれぞれ鉛筆でデッサンし、色鉛筆で色を塗っていた。ある男子生徒が授業で必要な何かを忘れて、それがないからうまく描けないというようなことを先生に言い訳していたが、先生は「今日必要なことはあらかじめ分かっていたことで、それならどうやって問題を解決するのか?」と聞いていた。別の生徒が「必要なものは授業に持ってくること」と答えて、忘れ物をした生徒はそれ以上何も言えない様子だった。このことからも、自立心、結果責任、自力本願などのアメリカ人らしい考え方が見えた気がした。
今日は1日フェスラー中学校で過ごしたので、日本人生徒たちは、さらに友達も増え、自然にアメリカ人生徒たちと馴染んできたようだ。ランチタイムも、カフェテリアや外のテーブルで、日本人生徒で固まることなく、アメリカ人生徒たちと一緒に食べていた。授業が全て終了した後は、図書館に集合して、明日のサヨナラパーティーの話と、明日持ってくるものの連絡事項などをした。生徒たちには、私たちのためにいろんなことをしてくださったホストファミリーに感謝の気持ちを込めて行なうパーティーなので、全員が何らかの形で関わり、パーティーをぜひ成功させようと話をした。4時にホストファミリーが迎えに来てくださり、それぞれ帰って行った。1日1日があっという間に過ぎていく。アメリカでの日々も残りあとわずかとなってきた。一瞬一瞬を大切に使って欲しい。 |