午前7時30分、大型ショッピングセンターの駐車場に集合。いよいよ日本に帰る日がやってきました。天気予報では雨のはずが、雲間からは淡い青空が覗き、空港まで向かうバスを、まぶしいくらいの朝日が照らす美しい朝でした。私は少し早めに到着したのですが、すでに一組のホストファミリーが到着していました。子どもの学校があるため早めに去らなければならないということで、日本人生徒との別れを惜しみ、互いに涙を浮かべながら抱き合っています。「またアメリカにおいで。必ずまた会おう」と再会を約束し、それでもやはり名残惜しそうに、駐車場をあとにしました。しばらくすると、一台、また一台と日本人生徒を乗せた車が駐車場に入ってきました。トランクからひょいとスーツケースを取り出してくれるホストファザー、目を真っ赤にして日本人生徒を抱きしめるホストマザー、まだまだ日本人生徒たちと遊びたい気持ちでいっぱいのホストブラザーやシスターの姿を見ていると、ホストファミリーにとっても、この10日間がとても充実したもので、日本人生徒たちがかけがえのない家族の一員になっていたのだということを実感しました。多くのホストファミリーから、また必ずホストをしたいというお言葉を頂けたことは、チームオリンピアがいかに貴重な経験をホストファミリーにGive出来ていたかという証拠だと思います。再会を約束し、日本人生徒たちを急き立てるようにして、バスに乗り込みました。
シアトル空港までは1時間弱で到着。別れの悲しみ漂う車内になるかと思いきや、賑やかに日本に帰ってからの連絡先を交換し合う生徒たち。ホストファミリーとのやり取りも、メールやフェイスブックなどの便利な手段があることもあってか、海を越えても親密な関係を続けられるこの時代において、別れの寂しさは昔よりも薄くなっているのかもしれません。その利点を存分に活用し、日本に帰ってからもホストファミリーとの関係をぜひ保って欲しいと思います。
空港に着く前に、空港内での団体行動に関しての注意事項や、搭乗までの流れについて説明をしました。英語環境に慣れ、また、日本人同士仲良くなって緊張感が薄くなってしまうことで、忘れ物や何かトラブルが生じることはしばしば起こります。宮崎空港に到着するまで、気を抜かずに機敏な行動をとって欲しいということを伝えました。そして空港に到着して早々、スーツケースに乗って移動しようとする生徒がおり、重ねて注意をしました。ひさしぶりの班ごとの整列。パスポートとeチケットを配り、チェックインカウンターが開くのを待ちます。このときにも、前日にマニキュアは落としてくるよう伝えていたことを守れていない生徒を厳重に注意しました。学校にマニキュアをしていったり、制服が無く自由な服装だったり、校内でお菓子を食べても怒られなかったり、また、好きな授業を選択して自分の時間割が作れたり、日本の子ども達には、"好き勝手できる自由"がうらやましいと感じられる点も多々あったと思います。実際に、このような点を"発見"して感化されている様子が日記からも読み取れました。しかし、この自由には必ず責任が伴っていることにも気づいて欲しいと思います。着飾ることが許される自由には、節度を守るという自制の精神がなければならないし、選択できる自由には、単位管理などその選択がもたらす結果がすべて自己責任として返ってきます。表面的なことだけ模倣するのではなく、アメリカ人生徒たちが自由な環境にあってなぜ日本人生徒たちよりも大人びて見えたのか、なぜアメリカでは許されたことが日本では許されないのか、その根源にある文化の違いまで考えられるようになって欲しいと思います。
チェックイン開始まで1時間ほどあったため、ここで感想文用紙を配りました。全員分回収後、帰国報告文集としてメンバー全員の元へお送りします。チェックイン前に、空いているカウンターでスーツケースの重さをチェックさせてもらいました。日本を出発したときは、日本のお菓子やお土産でパンパンだったスーツケース。今度はアメリカで購入したお土産やホストファミリーからのプレゼントでいっぱいです。中には制限ギリギリの22.6kgを記録する生徒もいましたが、全員制限以内で荷造りをしてきてくれており、助かりました。チェックインカウンターが開くと、日系航空会社ということで、アメリカ人スタッフも「おはようございます」「ありがとうございます」「いってらっしゃいませ」と片言の日本語を話されていました。また、看板や電光掲示板も日本語と英語が併記されており、生徒たちは「日本語の看板ひさしぶりだ」と言って少し嬉しそうな様子でした。全員のチェックインが終わると、ここまで見送ってくれたクリスティー先生とジェニファー先生に別れを告げて、セキュリティーゲートへと向かいます。現地でのコーディネーターとして、また、ホストファミリーとしても、日本人生徒たちの滞在に献身してくださったTCとの別れもまた、名残惜しい限りです。アメリカ人らしい大らかさと、プログラムを円滑に進める気配りの心と細やかさを併せ持った、素晴らしい先生方でした。
セキュリティーゲートでのボディチェックは日本よりも厳しく、上着や靴を脱いで金属探知機を通ります。丁寧な対応の日本の空港に比べ、アメリカの係員の方々の対応は生徒たちには乱暴に感じられたようでした。全員が揃ったら、トラムに乗り、搭乗ゲートに向かいます。搭乗開始時刻よりも2時間ほど早く到着したので、集合時間を決め、一旦解散しました。ターミナル内にある売店で最後の買い物タイム。お菓子やマグカップなど、残りのお小遣いを考えながら、お土産を購入していました。集合時間にはみんな集まり、機内での注意事項や成田空港到着の際に必要な書類の配布をしました。同じ飛行機には、みんなと同じように春休みのホームステイに行っていたという他社プログラムのグループが2組いました。順番に乗り込み、定刻の13時15分に飛行機は成田空港に向けて出発します。
離陸後しばらくしてから機内食が提供されます。感想文を書いたりゲームをしたり、来たときよりも少し長い10時間半程度のフライトを、快適に過ごしました。成田空港へ到着し、入国審査前にパスポートと税関申告書の確認を行なったところ、一人の生徒がパスポートを失くしたと言ってきました。リュックの中身を全部取り出してみても、服のポケットを探してみても見つかりません。仕方なく、全員で入国審査のカウンターに進み、他の生徒たちにはスーツケース受け取り後に集まって待機しておくよう伝え、そのパスポートを紛失した生徒と全日空職員の方の元へ行き、機内の確認をとっていただきました。15分程待って、機内清掃の方からパスポートが見つかったとの連絡が入り、入国審査場まで持ってきていただきました。帰国時は気が緩むためこういったトラブルが起こりがちだということを、シアトル空港へ向かうバスの中や搭乗ゲートで注意していたにも関わらず、実際に起こってしまったことは残念でなりません。持ち物の自己管理の徹底、機内での過ごし方、団体行動の心構えについても、25人全員に再度注意を促しました。
税関を通り抜け、到着フロアに出ると、グラスバレーグループの数名と合流し、一緒にリムジンバスに乗って羽田空港に向かいます。春休みということもあってか、空港内は大変混雑していました。搭乗券を配布し、スーツケースを預け、セキュリティーゲートへ向かいます。宮崎空港へのフライトは、19時15分出発予定の時間が遅れ、20時の出発となりました。30分程度の自由時間を設けると、お腹を空かせた生徒たちは売店でお弁当を購入したり、家族への東京土産を物色したりしていました。感想文をまだ提出していない生徒には、搭乗前には提出できるようお願いしました。また、ホストファミリーへは必ず帰国の報告とお礼のメールや手紙を送ること、そして、ゆっくりと休んで新学期に備えることなどの旨を伝えました。いよいよ、家族の待つ宮崎行きの飛行機へと乗り込みます。
宮崎空港に到着すると、生徒たちの帰りを待ちわびる家族のみなさんに温かく迎えられました。ただでさえ生徒たちの帰りを待ち望んでいる中、1時間も到着が遅れてしまい、長らくお待たせしてしまいました。およそ24時間の長旅。ご家族に伝えたいことがたくさんあって、興奮状態の生徒たちとは思いますが、早めに休んで週明けからの新年度に備えてもらいたいと思います。最終便での帰宅となり、遠方からのお迎えは大変だったかと思います。本当にありがとうございました。
引率者として出来ることは、生徒たちをアメリカに連れて行き、プログラムを円滑に進め、そして無事にご家族の元へ帰すこと。ホームステイを通してどのようなことを学び、今後の進路にどう役立てるのかは参加者の皆さん次第です。このプログラム期間中に出遭った全ての方への感謝の気持ちを忘れず、ホストファミリーとの関係も大切にしてください。チームオリンピアのトライの精神は、とても素晴らしかったと感じます。みんなの視点を通して、私も新たな学びを得られた気がします。11日間、本当にお疲れさまでした。みんな仲良く、元気に過ごしてくれてありがとう。
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