ホームステイとは何なのか。ホームステイでは何が得られるのか。40年以上にわたって、国際交流教育事業に関わってきた南日本カルチャーセンターによるホームステイの現状と提言です。

HOME > ホームステイの現状と提言 - 4 ファミリーへの影響
 
■ 1 変わりゆくホームステイ
■ 2 変化の背景
■ 3 ホームステイプログラムと
    ホームステイツアー
■ 4 ホストファミリーへの影響
■ 5 一般的な参加者の現状
■ 6 参加者と主催者に求められるもの
■ 7 異文化では、始めにトラブルありき
■ 8 最後に

執筆者: 南日本カルチャーセンター 代表取締役社長  濱 田 純 逸

■ 4 ホストファミリーへの影響

 ホストファミリーには、お金を受取って生徒を自宅に受入れる、いわば、「ビジネス」のホストファミリーと、全くの無報酬、すなわち「ボランティア」として生徒をお世話するホストファミリーの二通りの方法があります。前者の場合は、主にイギリスやオーストラリア、ニュージーランドやカナダなどで行われているホームステイの方法であり、後者は主にアメリカで採られている方法です。このホストファミリーが「ボランティア」か「ビジネス」かということは、大変大事な問題であり、ホームステイの根幹的な問題なのですが、特にホストファミリーがビジネスである場合、主催者側によって、そのことが消費者には公表されていないという問題があります。

前者の場合、つまり、ホストファミリーに滞在費を支払い、ホストファミリーは義務として部屋を提供し、食事を与えなければならないという契約制の場合は、双務契約の履行上、契約に基づくサービスの内容に不履行があれば、参加者がホストファミリーに対して、基本的にそれを要求することも可能になってくるわけです。しかしながら、これらの要求が頻繁に行われ、その要求内容が、主催者とホストファミリーとの契約内容以上のものになる場合を懸念したり、過度の要求が国際交流のトラブルに発展して行く可能性を憂慮して、主催者側は参加者側の権利意識を助長し、刺激しないために、このことを必要以上に公表することを避けているように思います。しかしながら、このことは先述しましたように、根幹的な問題であるがゆえに、主催者側は明確に参加者に知らしめる必要があると考えます。

参加者側と受入れ側の両者に、これらに関する正確な認識があれば、ホストファミリーも仕事ですし、参加者もホームステイという名の下宿、という視点で臨めばいいわけですから、気楽であり、ホストファミリーに気を使うこともありません。参加者は彼らと異文化の話をする義務もありませんし、家事を手伝う必要もありませんし、ホストファミリーは、部屋と一日二回の食事を提供すればいいわけですから、この場合は、参加者とホストファミリーとの間において問題は発生し得ません。つまり、この場合を極言すれば、ホストファミリーはホテルとほぼ同様のものなのですから、お金を支払いさえすれば、相手側の目的のほとんどは達成されていると考えられ、それ以上に相手のことを考える必要はないという、ビジネス上での関係でしかありません。日本流に考えれば、このようなホームステイは、民宿に滞在するのと同様であると考えれば、理解し易くなります。そうすると、これまで私が述べてきました「ホームステイツアー」においても、ホストファミリーがビジネスとしてお世話されるのであれば、契約上、取り決められたサービスを提供している限り、ホストファミリーに対する参加者側、主催者側の問題性は、全く存在し得ないということになります。

問題は、「ボランティア」のホストファミリーによる、「ホームステイツアー」上の認識において発生します。彼らがそれをボランティアで行なう理由は、「その生徒の国の文化を知りたい」とか、「同世代の子どもを持つ親として、時間を共有してお互いをもっと理解したい」とか、「日本や東洋に興味があるから」とか、「異なる文化の人と接触するのは面白そうだから」などの、様々な理由が挙げられますが、いずれも異文化理解や相互理解を目的としており、当然ながらお金ではないわけです。ところが、参加者がこれらの背景として成り立っているシステムを知らずして、もしくは、知っていても、観光旅行的気分で参加すれば、ホストファミリーとの間に大きな溝が発生することになってくるわけです。すなわち、それらの参加者のホストファミリーは、大きな失望を感ずることになってしまいます。参加者本人は、「ホームステイプログラム」に参加して、満足して帰国したとしても、そのホストファミリーは大変失望していたという事例は、過去に発生しているのが事実です。この参加者側と受入れ側の目的を両立させることが、大変大事なことなのであり、この二面性があるということを絶対に忘れてはいけないのです。もちろん、ホームステイ発足当初は、先述しましたように、参加者側も受入れ側も、この基本的な原点に立っていましたから、すなわち、「異文化理解」「相互理解」という共通の目的によって、両者が「ホームステイプログラム」に参加しているという認識でおりましたので、全く、問題性はなかったわけです。しかしながら、参加者のホームステイに対する認識の変化と、主催者の商業至上主義的な価値観の多様化の中で、「ホームステイプログラム」と「ホームステイツアー」という微妙に異なる分化が発生し、受入れ側にそのしわ寄せがきているという現状を見れば、ボランティアのホストファミリーによって行われるホームステイでは、「ホームステイツアー」ではあってはならないという強い認識を持つべきだと思います。

でも、これらの問題は参加者の問題というより、主催者を含めた参加者側の問題ということができると思います。いやむしろ、参加者側より主催者の問題と言った方が、適切かもしれません。つまり、参加者は生徒であるわけですから、主催者にその参加者を事前に指導する義務があるのであり、それに怠惰であったり、怠慢であったりするのでは、ある意味では、生徒とその保護者が最大の被害者であるといってもいいかもしれません。参加者に、少なからず、国際理解学習や異文化交流の意図はあったとしても、それを具体的にどのように実践すればいいか戸惑うのは当たり前であって、特に参加者が、小学生や中学生などの低年齢であれば、主催者が事前にこれらに関する具体的指導をしなければ、何もできないのは当然です。その意味においては、これらの問題は、主催者の事前学習指導態勢や異文化学習の指導力の問題とも密接に関連しています。そして、残念ながら実際は、主催者にこれらの指導を行う能力も、情報も、理念も、方法も不足しているのが、数多くの偽らざる現状であるといえるかもしれません。つまり、ホームステイの海外旅行化、観光旅行化、それに基づく商業主義化が加速していることから演繹的に考えれば、そのような悲観的な分析をせざるを得ません。

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